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銀行の方が「審査甘い」は本当?近年のカードローン事情と融資問題

最近、インターネット上で銀行カードローンの広告をよく見かけるようになりました。収入証明書が不要で高額の借り入れが可能であることを宣伝しているものが大半です。

かつて銀行カードローンは消費者金融に比べて審査が厳しいというイメージがありました。しかし、現在では、消費者金融の審査よりも借り入れが簡単にできる銀行カードローンも登場しました。その背景にはどのような理由があるのでしょうか。

「銀行カードローンなら安心して利用できる」、このような先入観は多重債務になる可能性があり、危険な考えです。現在の銀行カードローンの借り入れで損をしないために、知っておくべき貸金業界事情を解説していきます。

「消費者金融は怖い&銀行は安心」の時代は終わっている

銀行カードローンが利用者を増やしている背景には、利用者の高齢化と、かつての消費者金融の先入観があります。現在60~70歳の世代は、消費者金融の悪いイメージが拭い切れていない世代でもあります。

高度経済成長期にかけて、「サラ金」と言われてきた消費者金融は、高利貸しという印象を利用者に与えていました。そのうえ、闇金が跋扈しており、年利数百%という異常な金利で過剰な取り立てまで行っていたという事実が社会問題となりました。

こうした問題があったことにより、当時を知っている世代は未だに「銀行以外の貸金業者を利用するのは怖い」という考えが根強くあります。その点、自分がよく知っている銀行であれば、そうした違法なことはしないだろうという安心感から、高齢者は消費者金融カードローンよりも圧倒的に銀行カードローンを利用する割合が多いのです。

高齢者に銀行カードローンが多い理由は、総量規制の影響を受けない点もあります。

収入が年金しかない高齢者にとって、お金が必要になっても消費者金融では高額の借り入れが出来ません。総量規制によって、年収の3分の1以上の借り入れが出来ないためです。年金は収入として認められますが、それ以外に収入がない高齢者は、総量規制の対象である貸金業者から一定上の金額を借りることが出来ません。

その点、銀行カードローンは年収にかかわらず、審査によって限度額が決まるため、場合によっては年収の3分の1を超える借り入れが出来ることもあり、高齢者の申し込みが増えているという現状があるのです。

要注意!銀行カードローンが過剰融資をする時代?

つい先日、「無職の利用者に500万円の銀行カードローンを組ませた」というニュースがありました。審査が厳しいと言われていた銀行カードローンなのに、本来借り入れ自体出来ないはずの無職の者にこれだけ高額な融資をしていたということで問題となりました。

本来、「利用者が返済できなくなると思われる額の貸し付け(過剰融資)」は、債権側の過失とされています。厳密には明文化されていないため違法ではないのですが、貸金業者では暗黙の了解となっています。

なぜなら、過剰融資により利用者が多重債務になると、債務整理をすることになり銀行としては踏み倒しをされる形になるためです。しかも、その額があまりに高額だったり、 債務整理の件数が増えると当然ニュースになり、銀行の信用に傷がつくためです。

そうしたことから、銀行は今までカードローン審査は非常に厳重におこなってきました。借りたい人がいても借り入れが難しいのが銀行カードローンでした。それなのに、なぜ、こうした過剰融資を銀行がする事例が増えてきたのでしょうか。

銀行が本来借り入れできないような人に高額の貸し付けをしている原因には、マイナス金利政策の影響による、銀行の資金運用の苦しさのツケが消費者に回ってきている現状があります。

詳しくは次に説明しますが、銀行カードローンなら安心して利用できるという先入観は危険です。現在の銀行カードローンは、本来それだけの額を返済する能力が無い人にも、多額の融資をする可能性がある問題を孕んでいることを留意しておく必要があるのです。

多額の借り入れは危険!審査が甘い銀行カードローンの不思議

「消費者金融と銀行カードローンの違いは何だと思いますか?」、借り入れを考えている人にこうした質問をすると、返ってくるのは「銀行の借り入れの方が金利が低い」という答えです。

確かに間違ってはいませんが、銀行の借り入れでも100万円未満の借り入れでは消費者金融とわずか数%しか金利が変わらないという事実をよく理解していない現状もあります。

金利の適用は「審査によって決められた利用限度額」によって設定されるのですが、限度額が低いうちは銀行カードローンであっても、年利14%前後の利子が発生するということを理解していない利用者が多くいます。

銀行カードローンは、少し前まで低金利で審査難易度が高い借り入れ方法という認識でした。しかし、現在の銀行カードローンはその性質が少し異なっています。資金繰りに困っている銀行では、銀行カードローンが異常なまでに審査が甘くなり、過剰融資が横行し、問題になっているのです。

何が言いたいかというと、利用者側に適切なリテラシー(知識)が求められているということなのです。「こんなに貸してくれるなんでラッキー!」と考えるのは、多重債務に陥る考えで非常に危険です。自分が必要な金額のみを借りるようにして、返済できないほどの融資は、むしろこちらから断るようにしましょう。

銀行が個人の過剰融資をするようになった背景とは?

審査が厳しいと有名だった銀行カードローンが、なぜ返済能力が無いと判断される人にすら高額の融資をするようになったのかという話をしておきましょう。

本来、銀行はただ国民のお金を預かっている組織ではなく、れっきとした営利企業です。銀行に勤めている人の給料は、税金ではなく銀行が上げる利益の中から支払われています。つまり、銀行は、企業や国民、他の銀行などから預かったお金を「運用して利益を出さなくては経営していけない」のです。

銀行が資産運用によって利益を上げる具体的な方法は融資と債券運用です。預金などで預かっているお金を誰かに利子をつけて貸す、株式や国債・社債等を購入し、その配当や売買によって利益を出します。特に、企業融資や日銀との資金運用は、安定して利益を出すことが出来る、言わば、銀行経営の屋台骨でした。

これが崩れたのは、政府が導入したマイナス金利を代表とする金融政策が原因です。マイナス金利とは、簡単に言えば、お金を貸すほうが金利を支払う仕組みのことです。銀行は、それぞれ持っている資産の一部を日銀(日本銀行)に預けています。私たちが銀行に預けるお金と同様、お金を預けると利息が発生し、預けたお金が増えるのが通常の金利ですが、マイナス金利はこれが逆にお金を取られるようになる制度のことです。

マイナス金利の狙いとしては、銀行が日銀に資産を眠らせておくことを抑止し、その分を企業や個人に融資することで経済の循環を促すことでした。企業が銀行からお金を借りて設備投資をして発展すれば、業績も良くなり、それに従って従業員の給料も上昇、景気が良くなるという期待を込めていました。しかし、実際は違いました。

政府の誤算は、企業の営利行動予測の見誤りでした。確かに銀行は、マイナス金利を受けて日銀に資産を保管することを断念。その資金を融資に回し、利益をそちらからとるようにしました。

一方、景気が良くなる、あるいは業績が伸ばせるという展開が見込めない企業は銀行から融資を受けることを回避。銀行側も回収できる保証がない中小企業などへの融資を渋り、企業融資は思った以上に伸び悩みました。しかし、銀行には日銀にも預けず、企業にも預けなかったたくさんのお金があります。

どこにも運用しないお金は利益を生みません。そこで銀行が次の一手を打ちます。それこそが審査の甘い銀行カードローンの誕生にかかわってくるのです。

銀行が最大の利益を見込んでいるのは個人向けカードローン!

マイナス金利政策により、銀行の最大の関心は個人への貸し付けに移動しました。銀行内部に余らせてある資金をいかに効果的に運用するかという利回りの話になったとき、金利約4~14%で運用できる個人向けのカードローンに白羽の矢が立ったのです。

銀行カードローンは総量規制の対象にはなりません。つまり、収入が低い相手であっても、たくさんの融資をすることが出来るのです。いくら借り入れが高額になれば金利が下がるといっても、数百万の融資で5%前後の利益が見込めるとなれば、これを利用しない手はありません。

なぜなら、企業に融資すれば、利率は2%程度しかなく、日銀への当座預金はそれより低いのです。年収200万円の人を例にとれば、消費者金融では合計で約60万円程度しか貸すことが出来ません。しかし、この程度の年収層で、もっとお金が必要な人などいくらでもいます。

銀行のカードローンによる過剰融資の問題の根底には、マイナス金利と景気判断による銀行の資産運用と、総量規制が及ばない法律の抜け道という2つの理由があるのです。

こうした背景の結果、銀行の個人向けカードローン競争が激化、その結果、本来であれば借り入れが出来ないような者にすら、数百万円のカードローンが組めてしまうような事態になっているのです。先に述べたような極端な例(無職であるにもかかわらず500万円ほどの借り入れが可能になったケース)も珍しくなくなっているのです。

私たちが自分で判断するべきなのが銀行カードローンだ!

かつて、消費者金融は用心して利用する対象であり、銀行カードローンは適正は審査があるため安心して借りることが出来るというイメージがありました。その認識は今では逆転していると思った方が良いでしょう。

消費者金融は総量規制によって過剰融資が出来ないですが、銀行はその気になれば個人にいくらでも融資をすることが出来るため、利用者に適切な知識が無ければ、多重債務のリスクは銀行の方が高いのです。

特に気を付けなくてはいけないのが、 高齢者が銀行カードローンで多重債務になるケースです。「60歳を超える人が5つの銀行で年収を遥かに超えるカードローンを利用していた」、こうした事例が弁護士や司法書士に相談してくる件数がここ数年で一気に増えています。

カードローンの審査は、本来収入をもとに限度額を試算することで適切な利用額を算出します。審査が甘いと言われる貸金業者は、収入以外の審査が寛容なため、信用を得られなくても金利を高くすることで融資を受けやすくする仕組みをとっていました。

しかし、審査が甘い銀行カードローンは全く異質なものです。悪質な銀行の例では、自行にある余分な資金を早く減らしたいため、「手っ取り早く個人にカードローンとしてばらまいてしまえばいい」という考えのもと、ろくに審査をせずに高額の融資を認めている実態があります。

「こんな自分でも銀行カードローンでこんなにたくさんお金を借りることが出来た」と喜んではいけません。本当に必要な分であっても、返済できないほどの借り入れは必ずどこかで無理が出ます。

借り入れを失敗しないためには、利用者側も知識が求められるのです。銀行の勧めるままに高額な借り入れをしやすい高齢者は、このことを肝に銘じておくべきなのです。

カードローンで注意すべき「リボルビング返済」を知っておこう!

「いくら借りても毎月たったこれだけの返済でいいんですよ」、カードローンの宣伝でよく使われる文言です。リボルビング返済と屋ばれるこの方法は、債務総額によって返済額が変わることがなく、常に一定の返済義務しかないのが特徴です。

これだけ聞くと、毎月苦しい返済が無くて助かると思うかもしれません。そして、少しでもそう思った人はカードローンの利用に向いていません。

カードローンの真の怖さは、リボルビング返済の利用による「返済した気になってしまう問題」です。

なんだそれはと思った人もいるでしょう。これは、リボルビングを利用した返済を利用することで、債務残高がほとんど減らずに返済が長期化し、総返済額が以上に膨れ上がってしまう問題のことです。多重債務になる人の半数以上は、このリボルビングによる返済の長期化が原因とされています。

リボルビングの怖さは言葉だけでは伝わらないので、具体的な数値の例を挙げて解説しておきましょう。

カードローンによって一括で50万円借り入れをしたとします。以降借り入れは全くせずに返済のみを行うとします。返済は元金定額返済方式、金利は銀行カードローンの相場14.5%で、毎月1万円のリボルビング返済を設定します。このとき、全額返済までにかかる期間は50ヶ月なので4年少し、返済総額は「65万6755円」にもなります。利息だけで約15万です。

次に、毎月一定の金額を借り続けた場合です。クレジットカードなどで買い物をするときなどはこちらの例でしょう。有名な例として、毎月3万円を借り入れ(買い物で利用)したとします。毎月のリボルビング返済額は5000円、買い物は1年でやめて、以降は返済に専念するとします。この場合、返済期間は72カ月なので6年、返済総額は「51万4423円」となります。こちらも利息分だけで15万以上になるのです。

このように、カードローンの返済方法であるリボルビング払いは、毎月の返済額が小さすぎると返済までの非常に長い期間がかかり、その分金利がどんどん発生し、毎月の返済は余裕があっても、最終的な総額自体が膨れ上がってしまいます。これを避けるためには、債務総額に対して毎月の返済額の割合を高く設定することが求められます。

これが出来ない場合は、利用額が収入と釣り合っていないということです。利用額を減らすようにしましょう。カードローンの審査が甘いからと言って、過度の借り入れをしては自己破産につながる危険が増すだけだということに注意しましょう。

【参考記事】
【カードローンの支払い回数】リボ払いと残高スライド方式の違いとは

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